新生産年齢人口の構築を

国民経済的に、高齢者の活用が待ったなしの課題になっている。この30年間で、15〜64歳の生産年齢人口が8700万人から7300万人に激減する一方で、65歳以上の高齢者人口は1800万人から3600万人に倍増した。日常生活に制限がないとされる健康寿命は、男性が73歳、女性は75歳に達している。

日本の生産年齢を少なくとも70歳にまで引き上げるべきことは明らかだ。
人工知能(AI)やデジタルトランスフォーメーション(DX)が人手を減らす側面はあるが、生身の人間ゆえに対応できる業務も少なくない。豊富な経験に裏付けられた、立体的で多面的な対人関係や事業遂行のノウハウ、いわば仕事のソフトウェアはいまだに人間、とりわけ高齢者に分があると思う。むしろAIやDXは高齢者こそ活用していくべきものである。

高齢者の活用にあたっては、同一企業の終身雇用にこだわる必要はない。転職を前提とした、経験値の横展開を促進すべきだと思う。蓄積された知見を、広く社会全体に役立ててもらうのである。そのための流動化した労働市場の整備を進めてもらいたい。

高齢者活用は経営者にも当てはまる。経済産業省のリポートによると日本の最高経営責任者(CEO)の在任年数は4〜6年が44%と最多だ。10年以上は約15%だが、米国は43%に上る。21年以上の在任者は日本の2%に対し、米国は9%と4倍以上の比率だ。さらにCEOの在任期間が長い企業の方が、PBR(株価純資産倍率)などの経営パフォーマンス指標が高い傾向が見られるという。

現実の日本企業の中でも、在任期間が長いCEOが革新的な事業モデルや経営改革、積極的な企業買収を進めて、高い成果を実現しているケースは少なくない。長期視点から企業価値向上のために、相応の長さの在任は有益である。在任10年以上となるとその多くは高齢者であろうが、高齢ゆえに経営能力を欠いているわけではない。

現場の働き手であれ経営者であれ、元気な高齢者は宝物だ、という認識が重要だ。むろん、高齢の女性は隠れた人材の宝庫であり、その一段の活性化など、多様性にも十分な配慮が必要である。65〜70歳の「新生産年齢人口」のための社会システムを早急に構築していきたい。

(参考 日経新聞 令和7年9月5日)