農地集約アプリで最適に

岩手県立大学発の新興一般社団法人、Tanbo(タンボ)はウェブアプリを活用した農地の集約事業を本格化する。分散した農地の集約事業を本格化する。分散した農地を耕作している農家は多く、集約によって生産性が高まる。これまで農家間で情報を共有する機会が乏しく、集約が進んでいなかった。地方自治体も巻き込んでの農家の収益拡大の道を広げる。

事業名は「農地コネクト」独自に開発したアプリ「農地集約システム」を使う。多数の選択肢の中から最適の組み合わせを見つける経済学の「マッチング理論」に基づき、耕作権の移動案を自動計算する。対象地域で参加を希望する複数の農家に「耕作したい土地」と「耕作したくない土地」を土地区画(筆)ごとに入力してもらう。アプリが計算したマッチング案を農家に示し、合意した場合は希望者に耕作権を移す仕組みだ。

タンボは地域ごとに、アプリのアルゴリズムで何を優先するかの原則をまず関係者間で確認する。例えば「できるだけ多くの交換が起こる組み合わせ」と決まればその原則に基づいた計算になる。同一地域の場合は面積あたりの収量(単位収量)の差はあまり考慮しなくてもよいという。
農地を集約すれば境界の土手や通路である畦畔(けいはん)をなくすことで機械による耕作効率が高まる。複数の農地を耕作していた農家の移動時間が削減できる点もこれまでの農地集約の実績でわかっている。

従来は農家が潜在的に耕作したい農地があったとしても情報収集に手間がかかった。土地ごとの工作意向の有無の話し合いにも時間を要する上、提案に全員が納得するとは限らないからだ。アプリにしたことで参加農家が気兼ねなく希望を入力できる利点もあるという。
タンボは10月をめどに滝沢市の対象地域の農家に事業を説明し、耕作希望地の意向を募る。タンボから農家への耕作権移動案の提示時期は、農家がコメの収穫を終えた後になる見込みだ。

滝沢市では2024年度、今回とは違う2地域で東北学院大学の黒阪准教授が農地集約の研究に取り組んだ。黒阪氏はタンボのメンバーで、その際も農地集約システムを活用した。25年度は学術的な研究成果の社会実装を目指す。タンボと東北学院大は共同で25年度、岩手県内の異なる自治体間の農地集約も研究する。具体的には盛岡市と矢巾町の境で、行政区を超えて農地を集約する。いずれも11〜12月に農家説明と耕作意向の入力、26年1〜2月の移動案の提示を予定している。

農家だけでなく自治体も土地利用の状況を十分に把握できていない。市町村境をまたいで数カ所の農地を耕作している農家もいるが、自治体が異なる情報の共有は一段と難しくなり、行政を巻き込んでの農地の集約の例はあまりなかった。
タンボは23年12月、社会課題の解決を目的に設立された。代表の小野寺氏は岩手県職員(休職中)で、現在は岩手県立大学大学院に在籍する。農地集約システムは同氏と黒阪氏が開発した。
両氏はタンボ立ち上げ前の22年から、盛岡市などで農地集約の実証に取り組んできた。その過程でアプリに改良を加え、農地集約の実績を重ねている。タンボとしては24年に宮崎県などとともに、同県内2市町で134組のマッチング案を提示した実績がある。

(参考 日経新聞 令和7年9月11日より)