都市に稲妻呼ぶ温暖化

日本で雷が増えている。東京や大阪など主要11都市の雷発生日数は、この四半世紀で16%増えた。温暖化が進んだ結果、空気が暖められて上昇気流となり、雷を起こす積乱雲ができやすくなった。落雷による人や物への被害も急増し、保険金の支払金額が増加傾向にある。

9月11日、東京都心では昼過ぎから夕方にかけて雷鳴がとどろき続けた。都内や神奈川県などで約1万軒が停電するなど大きな影響が出た。東京都立川市内の住宅では落雷が原因とみられる火災が発生し、住民が病院に搬送された。

日本周辺で発生する雷は長期的に増加傾向にある。気象庁のデータを基に東京、大阪、福岡など主要11都市の年間の雷発生日数を分析した。観測方法などに変更が無く比較可能な都市を選定した。1974〜2023年のデータについて毎年のブレを考慮して、3年移動平均の発生日数を算出した。前半25年間(1974〜98年)の雷発生日数は年平均180.2日だった。後半25年間(99〜2023年)は209.5日と16.3%増加した。

雷の増加について、九州大学の道端准教授は温暖化の影響を指摘する。気温上昇で大気が不安定になり積乱雲ができやすくなる。道端准教授は「平均気温が1度上昇すれば地球全体で発雷率が18.4%高まる」と分析する。都市では温暖化に加えて、周囲よりも気温が高まるヒートアイランド現象による影響も大きい。地表面がコンクリートやアスファルトなどで覆われている面積が広く、地表面付近の温度が高くなりやすいためだ。暖められた空気は上昇気流となり、積乱雲に発達する。

世界では赤道近くの国で雷が多い。赤道付近は、北半球と南半球の貿易風がぶつかり合って上昇気流が生じる。海面水温も高く、積乱雲が発達しやすい。米航空宇宙局(NASA)などのデータを分析して、一年間に雷鳴がとどろいた時間を国ごとに調べた。国土面積の違いを考慮し、単位面積1平方キロメートルあたりの合計時間を求めた。その結果、24年に雷鳴時間が最も長かったのは東南アジアのブルネイだった。1平方キロメートルあたりの年間の雷鳴時間は約10時間だった。パナマやコロンビアなど赤道近くの国が8〜9時間と続いた。

日本は約50分間と世界の中では長くない。ただ、増え続ける雷の被害は甚大だ。25年4月、奈良市で発生した落雷によって中高生6人が病院に搬送された。24年4月にも宮崎市で高校生18人が病院に搬送される事故が起きた。被害を防ぐために気象庁が出す「雷注意報」などの活用が必要になる。事故があった宮崎と奈良のいずれの場合も、雷注意報が出ていた。気象庁は1平方キロメートル単位で発雷状況や見通しを示す「雷ナウキャスト」も公開している。

雷によって建物被害や瞬間的に電圧が高まって家電製品が故障する被害も起きる。損害保険料率算出機構によると、22年度の保険金支払金額は147億円を超え、09年度に比べて6倍以上になった。雷観測システムを開発するフランクリン・ジャパン(相模原市)は保険請求などに使える「落雷証明書」を発行している。同社の重田気象予報士は「証明書の発行数は増加傾向で、24年度は首都圏での落雷が多かった影響もあり過去最高の2万通を発行した」と説明する。

雷を意図的に誘発させ、被害を防ぐための研究開発も進む。NTTは24年12月、ドローンを積乱雲に接近させて人工的に雷を発生させる世界初の実験に成功した。将来、安全な場所で雷を誘発できるようになれば被害を減らせる。

(参考 日経新聞 令和7年9月14日より)