丸亀製麺 店長年収最大2000万円 

トリドールホールディングス(HD)は9月17日、うどん店「丸亀製麺」の店長年収を最大で2000万円にする人事制度を導入すると発表した。現在の最大520万円から大幅に引き上げる。店長の評価基準に従業員の満足度を加え、生成AI(人工知能)を使って測定する。人材不足が強まってるなか、業種を超えて優秀な人材を獲得できる環境を整える。

同日開いた人的経営方針の説明会で、栗田社長は「働く人の幸せを最優先にすることで、商品や店舗に対するエンゲージメント(貢献意欲)を上げる。お客も店に足しげく通ってもらえるようになる」と話した。新制度では店長クラスを4つの等級に分け、等級を上げるための社内研修や試験制度を整える。まず2025年中に丸亀製麺の6店に導入する。新制度の対象者を3年で300人に増やし、将来的には年収が最大2000万円となる最上ランク「グレート」の店長が10人誕生する発想だ。

店長の評価は店舗の売上高や来店客数のほか、従業員や顧客の満足度を掛け合わせて実施する。従業員向けの調査では、16問程度の質問の内容を音声対話型の生成AIが解析する。例えば「自分の仕事について話すとき、どんな良い点を伝えますか?」などの質問をする。従業員一人ひとりの満足度を測定し、店舗全体の満足度を点数化する。来店者向けのアンケート結果も店長の人事考課に反映させる。

従業員や顧客の満足度、店舗の業績を一覧で示すシステムを12月に実用化し、店舗の状況が一目で把握できるようにする。データをもとに改善項目を提案するAIも搭載し、「どのような指数を高めれば、客に満足してもらえて業績が上がるのか、店長に示唆を与えてくれる」仕組みだという。新たな評価基準の導入に合わせ、店長の業務を見直す。店舗の従業員が働きやすい環境を整えることを重視し、従業員との1体1のミーティングなどに充てる時間を増やす。従来のシフト作りや発注業務亜などは副店長らに移管する。

栗田社長は「我々は従業員と客の心を大切にする「心」的資本経営を掲げ、成長のエンジンとする」と強調した。どの戦略を現場に普及させる役割を担う店長は「トップとして相応の報酬が必要だ」という。トリドールHDは25年4〜6月期に本業のもうけを示す事業利益が63億円と過去最高を更新した。年収引き上げは中長期的な固定費の拡大につながるが、好調な業績で吸収し、次の成長に向けた人材を獲得できる体制を整える。

店長の処遇改善を進める背景には、人手不足が事業拡大の足かせとなり始めていることがある。トリドールHDは人手不足のあおりを受け、25年3月期に丸亀製麺の出店数が当初計画の5割に満たなかった。厚生労働省によれば7月の「飲食物調理従事者」の有効求人倍率(常用、パート含む)は2.38倍と、職業全体の1.09倍を上回った。人材の定着も課題となっている。「宿泊業、飲食サービス業」の21年3月卒の新規大卒者が3年以内に離職する割合は56.6%と、産業別で最も高かった。
他業種に見劣りしない給与水準を示すことで、業種を超えた人材獲得競争に備える。

人材サービス大手のマイナビによると、25年3月末までの1年間で転職サイトに掲載された求人のモデル年収(平均値)は「外資金融系」が1626万円と最高だった。「フードビジネス(和食)」は482万円にとどまり、異業種に人材を流出するリスクが高まっている。協業他社も従業員の処遇に力を入れる。すかいらーくホールディングスはファミリーレストラン「ガスト」などの店長の年収を最大1000万円超とする人事制度を導入した。トリドールHDが最大2000万円を掲げることで、給与引き上げ競争がいっそう広がる可能性がある。

(参考 日経新聞 令和7年9月18日より)