フィンテック 集う外国人材

国内フィンテックが若い海外人材の採用を強化している。日本のIT(情報技術)業界で働く海外人材は10年間で3倍に増えた。柔軟な働き方や手厚い生活支援に魅力を感じ、米アマゾン・ドット・コムからPayPayに転職したエンジニアもいる。「ここまで柔軟に働ける企業は他に聞いたことがない」PayPayのエンジニアでスペイン出身のデービッド・アフォンソさん(26)はこう話す。23年にアマゾンからPayPayに転職し、アプリ開発を担当する。「エンドユーザーに近い金融サービスの開発に関わっていることが最大のやりがい」と語る。
入社の決め手のひとつになったのはリモートワークだ。PayPayは在宅勤務を認めており、アフォンソさんがこの3年間で出社したのは5回程度という。25年に週5日の出社を義務化したアマゾンとは対照的だ。報酬面は前職に及ばないものの生活費などを踏まえると「マドリードよりもよい生活ができており給与は十分に魅力的」(アフォンソさん)という。

PayPayは子会社と合わせて年間数百人のエンジニアを採用している。8割程度が外国人で20〜30代が中心だ。人材サービスのヒューマンリソシア(東京・新宿)によると、国内IT業界で働く海外人材は9.1万人と10年間で3倍に増えた。6.1万人が「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で就業しており、エンジニアなどの高度人材が中心だ。外国人エンジニアの転職仲介を手掛けるブルームテック(東京・豊島)は「特にフィンテック業界は採用競争が激しくなっている」と話す。

フィンテック側の支援は手厚い。PayPayは就労ビザや航空券の手配に加え、銀行口座の開設や住民票の登録など生活に欠かせない手続きをサポートしている。専門チームを設置するなど就労後もあらゆる相談に応じる体制を整えている。フィンテックらしい人事制度が求職者から評価されている会社もある。

デジタル保健システムなどを手掛けるFinatextホールディングス(HD)参加のFinatext(フィナテキスト)は上司や管理職だけでなく同僚との相互評価を取り入れている。ドイツ出身のデニス・メッツガーさん(34)は「技術力が正当に評価されるため、社内でキャリアを描きやすい」と話す。保険とテクノロジーを掛け合わせた「インシュアテック」事業を担当する。規制が強く古いシステムが残る日本の保険業界で新たな技術を開発するのが役割だ。

フィナテキストはグループ全体で国内に約20人の海外出身のエンジニアを抱える。日本での勤務経験のある人が大半だ。日本語が話せることも必須条件であるだけに人材獲得のハードルも高い。そこで活用するのがテックブログと呼ぶエンジニア向けの情報共有サイトだ。自社エンジニアに対し、業務で得られた開発ノウハウなどを個人名義で発信することを認めている。会社は自社の知名度を高められ、エンジニアは自身の技術力を外部にアピールできる。

生成AI(人工知能)などの高度技術の発達に伴い、IT人材需要は業界を問わず高まっている。労働人口の減少を補うためにも柔軟な働き方ときめ細やかな就労支援が不可欠だ。

(参考 日経新聞 令和7年9月25日)