改正育児・介護休業法が10月に完全施行された。テレワークや残業免除など多様な働き方の拡充を職場に求める。少子高齢化が深刻な日本で子育てや介護をしながら働ける環境の整備は欠かせない。一方で柔軟な働き方をする社員が増えれば同僚の負担増にもつながる。両立制度を使う社員とフォローする社員の溝ができないよう相互理解を深める工夫が重要になる。
「平日夕方に子どもと公園で遊ぶ時間が持てた半面、限られた時間内で仕事をこなす大変さを知った」明治安田生命保険の清水さんは話す。9月1〜5日に育児短時間勤務(1日6時間勤務)を体験した。昨年双子が誕生し、妻は育児休業中。「効率よく働こうと生成AI(人工知能)を試したが、それでも業務が終わらなかった」と打ち明ける。
同社は9月から短時間勤務を実体験する「かえるリレー」を始めた。子どもの有無や役職、性別にかかわらず、今年度は本社勤務の全社員らが1週間の短時間勤務を経験する。「制度利用者への理解を深めて職場で支え合う意識を育てたい」(人事部)
今回の法改正は2段階で、育児目的のテレワーク導入などは4月に施行済み。10月からは仕事と育児の両立制度を使うか否かを社員に確認し、配慮する義務が事業主に課せられる。勤務先から意向を尋ねるようにして様々な両立支援の利用を促す狙いだ。利用者が増えれば業務を誰が補うのかという問題も浮き彫りになる。パーソル総合研究所が2024年に実施した調査では、仕事をフォローしている同僚社員の42.6%が制度利用者への不満を持っていた。職場のあつれきを生むばかりか、子育て中の社員に罪悪感を抱かせ、制度の利用をためらわせる一因になる。
企業も対策を急ぐ。エスエス製薬は4月、育休取得者が所属するチームのメンバーに最大10万円を支給する制度を導入した。人事本部の大巻本部長は「同僚社員の負担増を考慮した。後ろめたさを軽減し、安心して両立できる環境を整えたい」と説明する。
LINEヤフーコミュニケーションズ(福岡市)は4月に週休3日制など法定を上回る制度を導入した一方「ノーワーク・ノーペイ」を徹底している。社員に求める業務や報酬は上司との面談で決める。仕事を軽減すれば給与が減る。同僚が業務を肩代わりするなら報酬に反映させる。
少子高齢化が進むなか、今後は介護との両立問題も浮上する。パーソル総研は育児や介護を担いながら働くケア就業者は35年に1285万人に達すると推計する。就業者の6人に1人がケアと仕事を両立することになる。中俣研究員は「フォローする社員への手当支給や人事評価への明確な反映など実質的に報いる仕組みを企業は急ぎ整えるべきだ」と指摘する。
(参考 日経新聞 令和7年9月28日より)
改正育児・介護休業法が10月完全施行
