外国人共生への道筋(その1)

不安除く入国管理を 埼玉県知事 大野元裕氏

埼玉県も生産年齢人口の減少が予想され、企業の人材確保は慢性的に難しくなっている。生産性を高めるため、外国人を活用したいという流れは一層進むのではないか。安い労働力としてだけでなく、グローバル社会におけるイノベーションを生み出すために外国人を活用することも必要とされるだろう。

だが一方で、県内でも川口市などで治安を理由に不安の声が出ていることも確かだ。こうした「外国人問題」は丁寧に定義する必要がある。まずデータでみれば、川口市の人口あたりの刑法犯の件数は、東京の新宿区や渋谷区の半数程度にとどまる。統計では治安の悪化を示す数字は出てこない。それでも不安の声は届けられている。こうした声を真摯に受け止める必要があると考える。

不安の背景には難民の認定申請を繰り返す「特定活動」で滞在する人が多いことにあるのではないか。足元で「クルド人」が課題視されているが、クルド人を示す統計はない。トルコ人として話を進めると、川口市のトルコ人は特定活動で滞在を継続している人が確かに多い。不安定な身分を背景に犯罪行為に走る人もおり、これが住民の不安につながっていると考える。

住民の不安を取り除くため、県として警察の機能強化に向けた働きかけを進めてきた。そのうえで外務省に対して、トルコと結んだ相互査証(ビザ)免除協定の一時停止をお願いした。難民申請に対して国が対応しないという現状は、外国人の「出口」での迅速な対応がなされていないということだ。それならば「入り口」にあたる入国の際に国として審査をするべきだ。

国は外国人を労働者とみているが、地方自治体からみれば生活者であり地域住民だ。国は共生社会の推進を掲げているが、査証免除制度を利用して不適切に滞在する人への懸念が広がれば、しわ寄せは生活者として受け入れる自治体に及ぶ。日本人と外国人が安心して暮らすためには適切な出入国在留管理に基づき、外国人が適法に滞在することが前提だ。国は責任を持って制度を構築すべきだ。

法相は8月末に外国人受け入れに関する論点整理を公表し、受け入れ数に上限を設定することの是非を検討すると表明した。私見にはなるが、上限の設定にはあまり意味がないと考える。いま議論すべきは外国人を入り口でコントロールし、入国後もしっかりとコントロールする仕組みの構築だ。そのうえで国としてどのような政策を進めるのかを決めていくのが先決だろう。

外国人を含めた共生社会を作り上げ、国籍や民族にかかわらず安心・安全な社会を実現することが自治体の使命だと考えている。日本の人口に占める外国人の割合は先進国の中では非常に低い水準だ。この段階で国民のコンセンサスを得るための議論を尽くす必要がある。悪い部分だけを切り取ったり、良い部分だけを強調したりする議論は好ましくはない。海外の先行事例などを踏まえ、国は検討を進めてほしい。

(参考 日経新聞 令和7年9月29日より)