外国人共生の道筋(その3)

家族帯同で働きやすく 青山学院大学教授 友原 章典氏

日本で暮らす外国人を経済学的に分析するため、いくつかのテーマで世間に広がる言説を検討してみたい。

雇用については「外国人労働者が増えると失業率が上がり、賃金水準が下がる」と言われる。しかし全体として著しい影響はないと言える。産業別にデータを分析すると、外国人労働者がかなり増えても飲食や建設、その他の業種でも失業率への影響は出ていない。外国人が働く業界は人手不足であることが多く、賃金も下がりにくい。ただ、短期的にもっと急激なペースで外国人が入るとどうなるか。ドイツで多数のチェコ人が、1年半の間に国境付近の大都市で働くようになった事象に関する研究がある。その都市自体の雇用状況は大きく変わらなかった一方、それまでドイツの地方から働くために流入した人たちの職が奪われる結果を招いた。

日本でも外国人労働者は関東や関西、名古屋といった大都市に集中しがちだ。さらに急激に増えれば、同じように日本人の若者が地方から都市へ仕事に出る流れに影響が出る可能性がある。若者の流出が抑制され、地方の過疎が和らぐかもしれない。

経済成長への効果はどうか。外国人が来るとしばらくは安い労働力を確保できるので企業は投資を抑える。10年ほどたつと逆に投資が増えてきてプラスに働く。技術革新の面で見ると、研究者の一部が日本人から外国人に置き換わっている。この流れは変わらないが、技術面の影響は限定的だろう。

外国人政策に関して政府はもっと景気循環に注意を払う必要がある。かつてバブル期に日系人を中心に多数の外国人を受け入れた。しかしその後のリーマン・ショックで失業率が高まると、渡航費を払い帰国してもらった。こうした経験をいかすべきだ。

例えば厚生労働省がまとめる地域ごとの雇用データを、外国人受け入れを担当する出入国在留管理庁が把握し、労働者の受け入れ人数を地域ごとに毎年調整する仕組みを作るのはどうか。今のままではせっかく日本に来てもらっても、景気悪化の際に失業するリスクにさらしてしまう。日本は定住する外国人を積極的に受け入れていないため、一定期間がたつとほとんどの人を帰国させている。それよりもせっかく来日してもらうなら、家族を帯同できるように規制を緩めて、長く働いてもらう制度にするのはどうか。家族も含めて外国人の生活環境の整備を進めれば、より多くの外国人労働者が日本で子どもを育てるようになり、日本の社会を理解して経済を支える人材が生まれるだろう。日本人と外国人が共に学校で学ぶ環境になれば、こどもたちが共生社会を理解するいい効果もある。

ただ足元の人手不足を満たすことを優先させ、社会が多数の外国人を受け入れる土壌がないうちにさらに大規模に流入させれば、社会や企業で外国人と日本人との間の摩擦が激しくなるの注意する必要がある。日本社会でこうしたことをしっかり議論すべきだ。

終わりに

深刻な人手不足を背景に、政府が外国人受け入れを拡大したのは安倍政権下の2018年だ。出入国管理法改正で在留資格「特定技能」をつくり、建設や製造、介護などで海外出身者を雇用する仕組みを整えて移住の道を広げた。国の将来を左右するテーマであり、本来は、国民に丁寧に説明し、労働市場や社会保障、治安への影響を検証しながら進めるべきだった。政府は国会などの審議に時間をかけず、データの公表にも後ろ向きだった。今になって不安が噴出し、住民に最前線で向き合う自治体を悩ませている。国は「選ばれる国」を目指す姿勢を一転させ、外国人への規制強化へと傾く。実態把握が不十分なまま結論を急げば人材確保に急ブレーキとなる。人口減のなか社会・経済をどう維持するのか。今そこ大局的な視点に立ち丁寧に議論すべきだ。

(参考 日経新聞 令和7年9月29日より)