トクリュウ捜査3000人体制

治安上の脅威となっている「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の壊滅に向けた警察の新体制が1日始動した。組織再編により警視庁に対策本部を創設し、刑事部と合わせて3000人規模の体制を整えた。都道府県の垣根を越え捜査する「準国家警察」としてトクリュウ中枢の摘発を目指す。

警視庁の組織を規定する改正都条例が1日に施行された。再編の狙いはトクリュウの首謀者に照準を絞り、捜査資源を集中的に投入する体制づくりにある。柱の一つは同日発足し、捜査の司令塔となる「トクリュウ対策本部」。現状は140人体制で、来春までに全国の警察から約200人が加わる。各部門の捜査で得られた情報を分析してトクリュウの中心人物を洗い出し、捜査戦略を立案する。

戦略に基づき的はつの主軸となるのが「新刑事部」だ。暴力団による犯罪を中心に捜査する犯罪組織対策部を刑事部と統合し、約2800人の陣容になった。トクリュウが絡む犯罪を専従的に捜査する250人以上の「特別捜査課」を部内に新設した。

対策本部と刑事部を合わせた体制は3000人を超える。愛媛県警(4月時点で一般職含め2878人)や奈良県警(同2896人)といった地方警察の全人員を上回る。対策本部は違法スカウトといった犯罪捜査にあたる生活安全部などとも情報を共有する。

警視庁の迫田警視総監は1日にあった発足式で「トクリュウは国民の平穏で安全な生活を脅かしている。一日も早く弱体化させ、壊滅に追い込まなければならず、そのためにはグループの中核的人物の解明・検挙が肝要だ」と述べた。

警察庁も1日、「トクリュウ情報分析室」を新設した。各地の警察からトクリュウの中枢につながる情報を集約し、警視庁の対策本部と連携する。日本では都道府県ごとに警察本部があり、管轄内での活動が原則となっている。しかしSNSを通じて実行役が次々に入れ替わるトクリュウによる犯罪は管轄を越えるケースが多く、中枢メンバーの摘発は限られていた。これからは警察庁と警視庁が一体となって捜査のターゲットを見極め、警視庁が操作の主力を担う。警視庁に管轄権がない事件でも、警察庁長官の指示で必要に応じて警視庁を投入できる警察法の適用を念頭に送った。

捜査幹部は米国全土を捜査する米連邦捜査局(FBI)を引き合いに「トクリュウの捜査においては警視庁が日本版FBIとして準国家警察の機能を果たす事になる」と話す。トクリュウによる犯罪は特殊詐欺やSNS型投資詐欺、強盗など幅広い。直近では特殊詐欺が深刻で、2025年の被害額は8月時点で約831億円に上った。通年で過去最悪だった24年(約718億円)をすでに上回った。警察幹部は「特殊詐欺の被害額を減少できるかどうかが、新体制の重要な成果指標となる」とみている。

(参考 日経新聞 令和7年10月2日より)