中国で「内巻」と呼ばれる過当競争が止まらない。世界をリードする電気自動車(EV)や電池など多くの業界に広がる。日本企業の中国事業の業績が悪化する恐れはあるが、適者生存の競争原理を生かす逆転の発想も出始めた。新たな視点は日本でかつて撤退・縮小した事業のグローバル競争力向上への活用だ。
「世界のトップ3をめざす」パナソニックホールディングス傘下で駅ホームの安全対策用自動ドアの事業を率いる譚可BU長は胸を張る。北京市の拠点はインドやインドネシア向け設備の設計で大忙しだ。パナソニックの自動ドア事業は1970年代に始まった。日本市場は2009年に市場低迷や不採算のため撤退したが、中国市場は08年の北京五輪に向けて開通した地下鉄向け設備の納入をきっかけに成長の機会をつかんだ。
中国市場は1981年に日本からの輸入で参入し、93年に現地生産を始めた。2010年には中国で開発から製造、販売までの一貫体制を構築した。日本で育んだ信頼・安全の技術力や海外販売網と、中国のコスト競争力を組み合わせた。「中国で調達する部品は日本より3〜5割安く、技術水準と供給能力も高い」譚氏は中国の利点を説明する。これまでに世界10カ国12都市で21件を受注し、24年には世界シェアでトップ7〜8位に入った。足元でやく60%の海外売上高比率を30年に85%近くまで高め、トップ3を視野に入れる。
ホンダも発電機や農業機械などに組み込む汎用エンジンで重慶拠点を活用する。主力の中型汎用エンジンは10年代までは日本で生産していたが、効率性などから現在、重慶やタイ、インドで生産している。中国では重慶を中心に汎用エンジンとその搭載機器で世界の約7割を生産し、スケールメリットが大きい。さらに生産工程や品質管理でデジタルトランスフォーメーション(DX)の導入が広がり、人工知能(AI)の活用による品質向上やコスト削減も進む。
重慶拠点は地元企業とのDX連携や生産ラインの自動化で品質向上や原価低減を実現し、ホンダの中国現地法人の上田総経理は「重慶のコスト競争力が最も高い」と話す。そのノウハウを他国に広げて汎用エンジンのグローバル競争力向上をめざす。
内巻の活用は、中国拠点の輸出競争力向上にとどまらない。パナソニックは大阪本社で手掛けてきた世界の部品サプライヤーを選定する部門の一部を段階的に上海拠点に移管した。内巻の「勝ち組」約6000社を発掘して世界のグループ企業にコスト競争力の高い部品を供給する。パナソニックの本間中国・北東アジア総代表は「元々は日本製部品を輸入して中国拠点に配ってきたが、その部品の流れが逆転した」と語る。
中国日本商会によると、25年前半の企業の業況は24年後半に比べ「悪化」した。中国から撤退する日本企業も相次ぐ。これまで中国企業が日本企業の技術力を利用して成長してきた。国際競争力を維持するため、今度は中国企業の優位性を生かすしたたかさが日本企業には必要だ。
(参考 日経新聞 令和7年9月22日より)
中国で止まらない「内巻」競争
