中国、超高層ビル制限強化

中国共産党の習近平指導部が超高層ビル建設の制限強化に乗り出す。経済成長の象徴とされてきた高層ビルの増加に歯止めをかける背景に、一部都市で実需が供給に追いつかず、多額の資金を投じて建てても使われていない実態がある。習総書記や李強首相ら党の最高指導部7人は7月中旬、北京で都市政策を議論する「中央都市工作会議」を10年ぶりに開催した。

重点任務の一つとして「超高層建築を厳格に制限する」との方針を定めた。「我が国の都市の発展は数量の大規模な拡張唐、既存資産の質の向上や効率改善の段階に向かっている」との認識を確認した。

中国はこれまでも高層ビルの新規建設を段階的に制限してきた。2020年4月に高さ500メートル以上のビルを新たに建てるのを原則禁止とした。21年10月には人口300万人以上の都市で250メートル以上、300万人以下の都市で150メートル以上の新規建設を制限した。今回は習氏らが出席する会議で方針を打ち出した点で重要な意味がある。各地方政府は中央の方針をくみ取り、ときに拡大解釈も交えながら地域の政策に落とし込んで行くことが多いからだ。会議では制限対象とするビルの具体的な高さに言及していないが、中国は100メートル超の建築物を「超高層建築」と定義する。地方政府は今後、100メートルを超えるビルの新設に慎重にならざるを得なくなる。

世界の建築家などの専門家で組織する高層ビル・都市居住評議会(CTBUH)の最新の集計によると、世界で150メートルを超す高層ビルは7591棟ある。このうち中国は3562棟と半分近くを占める。経済成長に伴って2000年代から建設が加速した。高層ビルには限られた土地を有効活用できる利点があるが、地震や強風などへの対策で普通のビルよりコストはかさむ。火災発生時の消防でも特別な対策が必要だ。

中国ではメンツが重視される。そのため地方政府や不動産開発会社が「むやみに高さや奇抜なデザインを競いあい、実需から離れて建設を競い合っている」(住宅都市農村建設省)という弊害も出ている。たとえば中国東北部の遼寧省大連。中心部に高さ383メートルと370メートルの高層ビルが2棟ある。日本なら高さが全国1位に相当するランドマークで、それぞれ16年と19年までに少なくとも構造部分は完成済みだが、今なお使われていない。照明がつかないため日が沈むと真っ暗で、夜空に不気味にたたずむ。

天津市のあるビルは高さが597メートルで、完成すれば中国で3本の指に入る摩天楼として09年までに建設が始まったが、今だに完成していない。中国の対外経済貿易大学の西村教授は「中国では実需を超えた過剰供給は高層ビルに限られず、電気自動車(EV)や太陽光パネルなどあらゆる産業でみられる現象だ」と指摘する。

(参考 日経新聞 令和7年10月1日より)