外国人共生への道筋(その2)

景気に配慮し上限設定 上智大学教授 岡部 みどり氏

10年ぶりに英国に滞在している。難民申請者を非合法移民と捉えて受け入れに反対する世論が以前より強まったと感じる。税金で宿や食事を提供することへの財政負担が懸念されていたところ、難民申請者が地元の少女に性的嫌がらせをするに至り一気に抗議活動が広がった。以前も一部右翼の街宣活動はあったが、今は市民が治安への影響に不満を爆発させている。

日本では技能実習の見直しなどで大規模な外国人労働者の受け入れが始まることは専門家や関係省庁の間で共有されていた。しかし一般の人々にはそれほど知られていなかった。一部地域の外国人によるトラブルがSNSで広がり、7月の参院選などでポピュリスト政党が争点化したことで不安が噴き出した。SNSで拡散した内容がどこまで本当でどこが嘘なのか、行政がきちんと説明せず曖昧にしてきたことも疑念を広げた。

国民の間の不公平感の高まりが背景にある。物価が上がり、初任給の引き上げはあったものの40〜50代は賃金が上がらず生活が楽にならない。自分たちの給料を上げずにどうして外国人雇用を進めるのかという不満につながった。政府が適切な経済政策をとっていればここまで外国人政策が争点化することはなかったのではないか。

短期的には(人手不足で)社会が回らなくなる前に外国人雇用で穴埋めせざるえない。欧州でも自国民が就きたがらない仕事に外国人労働者が入っている。しかし長期的には、外国人雇用を先に進めてしまうと賃金上昇など労働市場の改善圧力がなくなってしまう。低賃金構造が固定化し、職種の魅力が失われるリスクがある。

技能実習や(在留期間が最長5年の)特定技能1号は問題はあってもある程度管理されている。日本語能力など一定のハードルがある。問題は「技術・人文知識・国際業務」だろう。主に大卒者が対象の在留資格で、最近は日本の専門学校などを卒業した人も増えている。本来はホワイトカラー向けの資格なのに、認められていない現業職で働いている人が少なくないと聞く。そういうケースを政府が追跡できていない。

在留期間に上限がなく家族帯同も認められる特定技能2号は、当初は建設と造船氏か認めていなかった。(23年から)対象業種が急拡大したものの、定住につながる資格を拡大するのはまだ早いのではないか。

法相が8月に公表した「論点整理」で言及した受け入れ人数の「総量規制」は必要だと思う。政府は経済団体などの意向に従って受け入れを拡大してきたが、景気の良いときに大規模に来日した場合、不景気になったらどうするのか。失業した外国人の失踪につながる可能性もある。

日本人ですら就職氷河期世代が中高年になってどうするのかと議論しているのに、外国人も加わったら社会保障の大きな重荷になりかねない。景気に連動する形で政府が受け入れ人数を調整する仕組みが必要だ。

(参考 日経新聞 令和7年9月29日より)