偽造品の対応が不十分だったとして、医療機器販売会社など2社がアマゾンジャパンに計約2億8000万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は4月、3500万円の支払いを命じる判決を出した。独占禁止法に詳しい専門家は、調査や出品停止の対応を講じる義務があると示したことを評価する一方、責任の範囲については曖昧さが残ると指摘する。
提訴したのは医療機器メーカー「トライアンドイー」と医療機器販売会社「エクセルプラン」だ。代理人の染谷弁護士は「裁判所が、巨大プラットフォームが一定の責任を負うと判断したことは価値がある。一部の主張が認められなかったため、高裁の判断を仰ぎたい」と話す。5月7日にトライ社など、同9日にアマゾンが東京高裁に控訴した。
エクセル社などが問題視したのは偽造品を巡る対応だ。トライ社は血中の酸素濃度を測るパルスオキシメーターを製造し、エクセル社が独占的にアマゾンが運営するマーケットプレイスで販売していた。だが、新型コロナウィルス禍で需要が高まった2021年8月ごろから、中国の事業者が10分の1ほどの価格で偽造品を出品し始めた。
マーケットプレイスは商品ごとにページが作られ、異なる事業者が出品しても集約されて表示される「相乗り出品」の仕組みを採用。商品ページの上位には価格が安い出品者の商品情報が表示される。偽造品が相乗りしたことでエクセル社の売り上げは激減。エクセル社はアマゾンの窓口に何度も対応を求めた。
ところが、販売価格を平均値から大きく離れた商品は「価格設定が誤っている可能性がある」として自動的に停止する措置があり、21年9月には正規品であるエクセル社の出品が停止された。またオンラインフォームから商業権侵害の申告をしたところ、商品ページ自体が削除された。トライ社とエクセル社は22年9月に提訴した。
東京地裁判決は商品ページ全体を削除したことについて「合理的理由がなく削除した。故意または少なくとも重過失がある」と認め、3500万円を支払うよう命じた。
植村弁護士は「偽造品の出品についてプラットフォームの責任を認めた点において非常に意義深い。ただ、金額は請求に対し小規模にとどまり、独占禁止法の観点から考えると義務の範囲を狭め過ぎているのではないか」と指摘する。
専門家が注目するのは、偽造品を削除する義務があるかどうかの判断だ。判決は、相乗り出品された商品が商品ページの商品と同一でないと申告を受けた場合、申告内容を調査し、合理的期間内に削除する義務を負うと認定。偽造品が出品されていると具体的な申告があったのに、調査しなかったのは「出品者の適正な販売機会を確保するために不正行為への対応を行う義務に違反する」と指摘した。
一方で「エクセル社は偽造品が削除されていた場合に得られら逸失利益を主張している。その前段階である調査義務違反との間に相当因果関係を認めうるものとはいえない」とした。
川島弁護士は「中小事業者も泣き寝入りせず、アマゾンのような巨大プラットフォームに責任追及できる余地があるとわかった。実務的にもインパクトは大きい判決だが、偽造品を削除しなかったことによる損害を認めなかった判断は、原告にとっては煮えきらないだろう」とみる。
医療品医療機器法(薬機法)上の規制がかかる商品の取り扱いも焦点となった。パルスオキシメーターは「特定保守管理医療機器」に該当し、販売には都道府県知事などから許可を得なければならない。中国の事業者は無許可だった。
判決は、規制対象は医療機器の販売者で、アマゾンが許可の有無を確認する義務まで負わないと判断した。植村弁護士は「確かに薬機法の規制は消費者保護のためで、競業他社のためではない。ただアマゾンは偽造品を相乗りであたかも同一商品であるかのように表示しており、不正競争防止法上の不正競争にあたるのではないか」と指摘する。
判決後の記者会見でトライ社の藤井社長は「繰り返し偽造品を削除するよう求めたが、対応してもらえなかった。判決をトリガーにして変わっていってほしい」と話した。
アマゾンは無策だったわけではない。人工知能(AI)を活用し、偽造品を含む様々な違反商品への対策を講じてきた。巨大プラットフォームは義務や責任をどこまで求められるか、控訴審の行方が注目される。
(参考 日経新聞 令和7年9月8日より)
偽造品アマゾンの責任は?
