デジタル地域通貨、名前の通り地域で活用される通貨だと思いますが、まさにそういう通貨です。実は私が25年前に大学の卒業論文として「地域通貨」をテーマにして書きましたので、興味があるし、現在どう変化してきたかを見ていきたいと思います。
8月上旬、福島県会津若松市のスーパーの「会津コイン」特設ブースには日用品の買い物に来た買い物客が絶えず立ち寄り、使い方や活用方法を尋ねていた。
娘と一緒に訪れた40代男性は「物価高のなか、ポイントもたまりお得感があった。妻は日々の買い物やクリーニング店でも使っている。自分も活用したい」と話す。
2023年運用開始の会津コインは現在1万人が利用し加盟は600店舗を超える。地元のコンソーシアムが主体でシステム大手のTISとみずほ銀行が決済システムを手掛ける。店が払う手数料を2%程度に抑えた。一般的なキャッシュレス決済は3~7%ほどだ。大手が開示しない購買データなども提供し、店舗経営に生かせるのも強みだ。
TISの岡山ソーシャルイノベーション第1部長は「利益をきちんと地域に還元できる仕組みをつくり、将来的には全国に広げたい」と意気込む。
デジタル地域通貨は全国的に急増している。19年の37から24年12月時点で289まで増えた。背景に非接触決済ニーズの高まりがある。総合研究開発機構の23年の調査で、コロナ禍の前後で支払い方法が変わったかを問う質問に23%が「現金以外が多くなった」と答えた。若い世代だけでなく60代までの全世代だけでなく60代までの全世代でキャッシュレス比率が上がった。
岸田文雄前政権のデジタル田園都市国家構想も追い風になった。埼玉県深谷市のデジタル地域通貨「ネギー」などが好事例として紹介され、推進交付金の対象となった。自治体や中小事業者のデジタルトランスフォーメーション(DX)につながると期待された。
実際に行政のアナログ手続き解消に寄与している例もある。会津コインなどは子育て支援などの公的給付金をデジタル地域通貨で受け取る仕組みにした。渋谷区の「ハチペイ」はマイナンバーカードを使って区民認証が可能で、区民に限った優遇がある。
では、マイナス面というと根強い紙文化もハードルとなる。「地域通貨をデジタルに切り替えた途端、プレミアム付き商品券の応募が激減した」ある商店街の理事長は肩を落とす。結局、紙も残し、事務負担は倍増した。「なんのためのDXか」と苦笑する。
キャッシュレス推進協議会は24年秋にガイドラインを策定し、目的に応じた機能や法令の規制対象となる条件などを整理した。福田好郎事務局長は「地域通貨でやるべきなのかも含め検討してほしい。最初にきちんと設計しないと、キャンペーン終了後も使われる仕組みにならない」と訴える。
紙で発行する地域通貨も2000年代前半にブームとなった。助成が終わると利用が落ち込むパターンを繰り返した。クレジットカードやコード決済などとの違いや利点を示せなければ、デジタル通貨も同じ轍(てつ)を踏む。
やはり難しいのは、どう継続していくかをよく考えることだと思います。単純な紙幣であれば、流通を目的でいいのだが、デジタル地域通貨はプラスほかの狙いも加えなければならない。ずっと続けていけるように設計してもらいたい。
(参考 日経新聞 令和7年8月25日より)
【追記】
イオン傘下のフェリカポケットマーケティングはスマホ決済を通じ地域通貨を消費者に還元できる自治体向けサービスを2026年に始める・「AEON Pay」や「楽天ペイ」などの主要なスマホ決済サービスが対象。地域内での消費が活発になるとして、開始から1年で30自治体への導入を目指す。新サービス名は「まちトクPay(ペイ)」
(日経新聞 令和7年9月20日より)
デジタル地域通貨の現在
