パソナグループがベトナムで手掛ける求人アプリが注目を集めている。日本居住経験が1年以上あるベトナム人材だけを対象とし、ベトナムで事業を拡大したい日本企業に送り込む点が特徴だ。在日ベトナム人が増え続けるなか、帰国後に日本居住の経験を生かすキャリア形成の「出口」としても存在感が高まる。
「ボディガードの仕事に憧れていた」日本に約4年間の居住経験があるハン・タイン・ロンさん(34)は今春、ベトナムのALSOKで警備員の仕事に就いた。ホーチミン近郊にある日系企業の工場が職場だ。日本からの来客も多く、日本語で案内できる警備員の評判は上々という。ALSOK現地法人の市岡最高経営責任者(CEO)は「単純な警備だけではない付加価値の高い仕事を担える貴重な人材だ」と話す。
パソナグループが24年から始めたベトナム人求職者と日本企業をつなぐサービス「おかえりジョブ」が架け橋になった。同サービスは求職者を限定し、技能実習や留学で日本に1年以上の居住歴があるベトナム人に絞る。9月15日時点で、求職者は1200人、日系企業は87社が登録し、朝日生命保険やKDDIで9人の採用が決まった。
パソナベトナムの古谷社長は「企業は日本後能力よりも「時間を守る」など日本の職場への理解を求めている」と話す。おかえりジョブはもともと、ベトナムで活動する日本人実業家や総合商社の駐在員らが有志で立ち上げた企画だった。きっかけは、日本居住経験があるベトナム人の多くが帰国後に地元企業に就職していることへの懸念だったという。現地に進出した2000社以上の日系企業が、日本の礼儀作法や商習慣をしる「即戦力」を見逃しているとの問題意識があった。
日本から帰国したベトナム人材の支援だけでなく、ベトナムから日本へ向かう「入り口」の改善も進んでいる。国際協力機構(JICA)は7月、日本での就労を希望するベトナム人向けに、ベトナム海外労働管理局が持つ日本企業の「公式」求人情報を閲覧できるアプリの運用を始めた。高額な手数料を取る悪質な仲介業者を排除する狙いだ。借金を負って渡航したベトナム人が返済資金を窃盗したり不法滞在したりするケースがあり予防につなげる。アプリで全国どこでも手軽に求人情報を閲覧できる利点もある。
海外労働管理局のブー・チュオン・ザン副局長は「労働者が強みや専門に合う仕事を探し、採用要件の技術や言語の習得に前向きになる」と期待する。JICAベトナム事務所の小林所長は「ベトナムでの成果を、日本に人材を送出する他国に発信したい」と意気込む。日本に住むベトナム人は2024年末時点で前年比約7万人増の63万人を数える。深刻な人材不足を解消するため10年代から労働者の受け入れが進み中国に次いで2番目に多い規模となった。ベトナムとの人材交流を促進する様々な取り組みは、他の国や地域との連携にも応用できる可能性がある。
(参考 日経新聞 令和7年9月19日より)
日本居住経験のベトナム人
