マンション建築費 最高続く

マンション建築費の高騰が続いている。民間調査によると、東京の工事原価は8月に前年から5%上がり過去最高を更新した。主要な部材である鉄鋼製品が値下がりしているにもかかわらず、建築費高の歯止めがかからない。主因は専門作業を行う職人の人件費上昇だ。「人手不足インフレ」が住宅価格を直撃している。

建設物価調査会(東京・中央)が10日発表した8月の建築費指数によると鉄筋コンクリート造マンションの東京地区の指数は139.2と前月から0.1%上がった。上昇は9か月連続で、前年同月比の上昇率は5.1%に上る。「8月は軽油高で資材の運送費が値上がりしたほか、クレーン操縦者の人件費が上がったことが影響した。」という。
同調査会は鋼材やコンクリートをはじめとする建設資材のほか、それらを組み立てる作業員の人件費なども含め項目ごとにコストをはじき、合計の工事原価を指数化して毎月発表している。マンションのほかオフィスビルや工場なども対象で、いずれの指数も最高値圏での高止まりが続く。

主要な建設資材である鋼材は足元で値下がり傾向が顕著だ。RC造マンションに使う鉄筋の価格は1トン10万6500円前後で、1年前から10%下がった。鉄骨造のオフィスビルや工場などに使うH形鋼も同5%安だ。現場の人手不足で建設工事が滞っており、需要が弱いため鉄鋼メーカーや流通事業者が値引きを迫られている。新型コロナウイルス禍後の経済再開やロシアのウクライナ侵略に端を発する資材インフレは峠を越えたとの見方が多い。それでも建築費が下がらない背景には、専門作業を担う職人の人件費上昇がある。労務費の指標となる公共工事設計労務単価を見ると、2025年3月は全国全職種平均で2万4852円と前年から6%上がった。上昇率は14年3月以来の大きさだ。

マンションの建築などでコンクリートを流し込むための合板を組み立てる「型枠工」の労務費は全国平均で3万214円と国土交通省が定める主要12職種の中でも最も高い。高い技能が求められる作業で、人手不足が深刻化している。2020年の国勢調査によると全国で、型枠工として働く就業者の数は4万840人と10年間で約2割弱減った。高齢の技能者が引退する一方で新規就業者が少ないタイめだ。型枠工事を手掛ける三成建設の三輪代表取締役は「型枠工事は屋外での作業が中心で負担が大きい。工事を続けていくためには必要な人材を確保するためには、一段の賃上げなどさらなる待遇改善が必要だ」と話す。

12職種の中で労務費が型枠工に次いで高いのが、建築現場などで鉄筋の加工・組み立てを手掛ける「鉄筋工」の3万71円。いわゆる「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージが強く、人が集まりにくい事情は型枠工と同じだ。関東の鉄筋加工会社の幹部は「現場にいるのはほとんど50代以上。いくら賃金を上げても若い人は雇えない」と打ち明ける。

建物への電気の引き込みのほか配線やコンセントの設置などを手掛ける電気設備工事も人手不足に悩んでいる。ある電気設備大手の担当者は「こなせる仕事量を大きく上回る発注があり、一部は断らざるを得ない状況だ。労務費の上昇分を転嫁できる案件を優先的に引き受けている」と話す。

建築費の高騰はマンション販売価格の上昇につながる。不動産経済研究所の松田主任研究員は「工事原価が上がれば、ゼネコンは高値でも売れる好立地の高級物件を厳選して手掛けるようになる」と指摘する。比較的安価な物件の供給が減って全体の相場が上がるうえ、限られた開発用地の取り合いで土地の取得費用がつり上がり、価格の高騰に拍車をかけている面もある。松田氏は「建設労働者が増えない限り、資材安でマンションの価格上昇が緩やかになることはあっても下がることは当面ないだろう」とみる。

(参考 日経新聞 令和7年9月11日より)