ホンダは9月11日、軽の電気自動車(EV)「NーONE e・・」を12日に発売すると発表した。航続距離は軽EV首位の日産自動車「サクラ」を6割上回り、軽EVでは国内最長となる。自宅近くを走ることが多い軽では、十分な性能を確保した。使い勝手を高めて「2台目需要」を取り込み、低迷市場で巻き返しを狙う。
「EV減速の動きはあるが、カーボンニュートラルへ手を緩めずに進める」日本統括部長の川坂氏は、新型EVに期待を込めた。「NーONE e・・」はホンダにとって初めての自家用の軽EVになる。国内の軽EV市場でも自家用は3年ぶりの新型車で、EV市場の起爆剤としての業界の期待は高い。
自家用の軽EVの代名詞は日産サクラだった。どうシェア2位で兄弟車の三菱自動車「ekクロスEV」も基本性能はほぼ同じ。選択肢の少なさが市場が低迷する要因の一つだった。
ホンダは「NーONE e・・」で軽EVの使い勝手を大きく高めた。航続距離は東京ー静岡(熱海)を往復できる295キロ走り、日産サクラ(180キロ)を115キロ上回る。航続距離を長くするために電池容量をサクラ比で5割増やす一方、車体を同4%軽い1030kgに抑えた。車高も0.1メートル低くし、空気抵抗を抑えた。180キロでは冬場などは電費が落ち、「走る距離が物足りない」との声があった。
走行性能を引き上げつつ、価格は「手に届くところを狙った」269万9400円の(国の補助金込みで212万円台)からにし、サクラよりも10万円高い水準にとどめた。ターゲット層は主に40〜50代の主婦層。長距離を走るガソリン車の「セカンドカー」として買いやすくした。
車体の大きさにもこだわった。車体の全高は1.545メートルで、2層以上の立体駐車場は一般に1.55メートル以下という基準を下回った。サクラは車高が1.656メートルで立体駐車場は使えなかった。
立体駐車場でもEV充電器の設置は増えている。東京都は4月から条件を満たす新築の集合住宅の駐車場に充電器の設置を義務化した。立体駐車場への対応は購入動機を高めるために重要だった。国内のEV市場は需要が急減している。調査会社のマークラインズによると、日本の電動車比率(プラグインハイブリット車含む)はサクラの販売効果により23年に3%を超える月が多かった。直近7月は1.9%にとどまり、1〜2割ある主要先進国と比べて最も低い。販売車種の少なさに加え、充電インフラへの不安感が買い控えにつながっている。
軽はEVとの親和性は高い。業界団体の調査では、軽の月間走行距離は200キロ未満が多い。買い物や子供の送り迎えなど近くを走る用途が中心だ。軽EVがどこまで普及するかが、国内のEV市場の行方を占う。
軽EVの競争環境は激しくなる。中国最大手のBYDが26年度にも軽EVを投入する方針。航続距離や価格は非公表だが、日本勢にとっては脅威だ。軽は日本独自の規格で外資は入りづらい「非関税障壁」とされてきた。ホンダは国内2000店ある販売店網の安心感を訴えるとともに、充電サービスの利便性も高める。
ホンダは軽で首位の「NーBOX」を持ち、メーカー別シェアではスズキとダイハツに次ぐ。今後の主戦場となる軽EVでも高いシェアを確保できるかが成長を左右する。BYDが軽で参入する前にどこまで存在感を示せるかが問われる。
(参考 日経新聞 令和7年9月12日より)
ホンダ、軽EVで巻き返し
