実家が空き家に どうする?

単身で暮らす親が介護施設などに入居すると、住んでいた実家が空き家になってしまう。管理コストや将来の相続などを考慮すると、残された実家はどのように取り扱うのがよいだろうか。

実家が空き家になると固定資産税や維持費がかかり続けるうえ、老朽化や防犯上のリスクも避けられない。人口減が進む地方では空き家は深刻な社会問題にもなっている。こうした状況の中で「売却して現金化すべきか」「相続人に名義を移すべきか」「相続まで親が保有すべきか」と迷う人は少なくないだろう。それぞれの選択肢をメリットとデメリットの両面から見ていきたい。

最もわかりやすいのが「売却して現金化する」選択肢だ。管理や維持費の負担から解放され、得られた資金を介護費用に充当できる。現金という形に変えておけば、相続時に相続人の間で分割しやすく、トラブルを避けやすい点も大きい。

実家を売却したときに利益が出た場合は譲渡所得税が課税されるが、売却相手が親族でないことなど一定の条件を満たせば譲渡所得から最高で3000万円が控除される。適用対象になるか確認しておきたい。現金化のメリットは大きいが親本人や親族にとって長年暮らした家を手放す心理的な負担は小さくない。気持ちへの配慮が欠かせないだろう。

「生前に相続人へ名義を移す」選択肢もある。贈与や親子間売買によって所有権を移転する方法だ。メリットとして、将来の相続手続きを簡略化できることや、相続人が早い段階から受け継いだ家をどう活用するか判断できるようになることが挙げられる。しかし、デメリットもある。相続ならば相続税を計算するときに、330平方メートルまでの土地の評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」が使えることがあるが、贈与の場合に類する制度はない。登録免許税や、相続人だら非課税の不動産取得税も負担する必要がある。しかも贈与から7年以内に親が亡くなれば、その財産は「持ち戻し」として相続税の対象に含まれてしまう。相続税の節税を意図して名義変更するとかえって税務上の不利益を招くこともあるため慎重な判断が求められる。

3つ目の選択肢は「親が死亡して相続が発生するまで親名義のまま保有する」というものだ。生前に名義を変更する場合と比べると、贈与税や譲渡所得税を支払う必要がなく、相続税では「小規模宅地等の特例」により土地の評価額を大きく下げられる場合がある。相続した空き家を売却する際には、一定の条件を満たせば譲渡所得から最高で3000万円が控除されるケースもある。税務上のメリットは大きい。デメリットは、相続までの空き家を管理し続ける必要があり、換気や清掃といった維持管理に手間と費用がかかることだ。また、いざ相続となったとき相続人の間で「売るか残すか」を巡って意見が対立することも多く、不動産の分割の難しさがそのまま「争族」の火種になりやすい。

どの方法が適しているかは一概に言えないが、判断の軸は3つある。まず、実家を売却しなくても親の介護費用を賄えるのかという資金計画の視点だ。預貯金で足りるのか、不動産を売却しなければ不足するのかを見極める必要がある。次に税務の影響だ。各種特例の適用条件を満たせるのかを含め、譲渡所得税、贈与税、相続税がどれくらいかかる見通しなのか事前に確認しておきたい。最後に、実家を「思い出の場」として残したいのか、それとも資産として割り切るのかという、家族の意向だ。複数の相続人がいる場合は、早い段階で意見をすり合わせておくとよい。

一つ確かなのは、何も決めずに放置すればリスクが増大するということだ。税理士などの専門家にも相談しながら「我が家にとっての最適な答え」を導き出そう。

(参考 日経新聞 令和7年9月27日より)