スキマバイト、一次産業救う

農業など一次産業の現場でスポットワーク(スキマバイト)の活用が広がっている。仲介大手のタイミーは20超の自治体のほか、農協協同組合などと連携して求人開拓を進めている。異業種からの人材流入や若者の就農のきっかけにもなりつつある。高齢化などで担い手不足が深刻な一次産業の活性化につながる可能性を秘める。

「求人に対して応募が来なかった日はない。2週間先の募集をしてもすぐに埋まるので本当に助かる。」北海道の北東部にある大空町で知床牛を育てるカネダイ大橋牧場の大橋社長は笑顔で語る。
同牧場では約2000頭の肉牛を飼育している。数年前から繁殖から出荷までの一貫生産を始めたことで作業量が増え、正社員の負担が増していた。以前は地元の高校などにアルバイトを紹介してもらっていたが、2月からタイミーの仲介アプリで毎日2〜3人分の求人を出すようになった。

見出しに「初心者大歓迎!」の文字が躍る仕事の内容は、牛の寝床や餌やり場所の掃除など。作業時間は午前9時〜午後5時(休憩2時間)で日給は7100円だ。
7月下旬に働いた女性は「知り合いの農家で働いたことはあるが牛の世話は初めて」と話す。本職は清掃関連の派遣作業員だが、空いた時間を有効活用できればと考えて応募したという。この女性は「子牛の力の強さと迫力に驚いたがやりがいが大きい。また働きたい」と声を弾ませる。継続的に応募してくる人も多く、カネダイではここ半年間で3人のスポットワーカーを長期雇用として迎えた。

農業や漁業、畜産などの一次産業では、少子高齢化や都市部への人口流出を背景に担い手不足が深刻だ。農林水産省によると、主な仕事として自営農業に従事する「基幹的農業従事者」は2020年に136万人と15年比2割減った。さらに今後20年で20年比8割減の30万人まで落ち込むと予測する。漁業就業者も24年時点で19年比21%減の11万人だ。

こうした人手不足に着目したのがタイミーだ。23年11月に農業の求人を開拓する専門チームを立ち上げ、その後、酪農や漁業にも広げた。同社は地域の様々な団体と組み、求人の需要を掘り起こしている。全国の自治体やJA、漁業組合と協定を結んだ上で、求人を出す事業者向けの説明会や個別相談会を共同で開催している。

こうした営業努力は徐々に実を結んでいる。25年4月時点でタイミーに求人を掲載する一次産業の事業者数は23年同月と比べて約8.7倍に増えた。求人の募集数も同じ期間で5倍となった。タイミーの小川代表は「地域と一緒に一次産業の人手不足を解決していく」と意気込む。

今回の行動は、新たな働き方の提供を通じ、一次産業への関心が高まる効果は大きい。多様な人材の呼び込みが日本の豊かな食の維持のカギを握る。

(参考 日経新聞 令和7年8月29日より)