中古護衛艦の輸出 フィリピンと交渉

日本政府はフィリピンの要請を踏まえ、海上自衛隊が保有する護衛艦や警戒管制レーダーの輸出を検討する。共通の防衛装備を使う仲間づくりを進め、東・南シナ海などで海洋進出を強める中国への対処力を高める。
中谷元防衛相は9月9日、ソウルでフィリピンのテオドロ国防相と会談した。海上自衛隊の中古護衛艦の同国への輸出が話題にのぼった。護衛艦の輸出はこれまでの日比防衛相会談でも話し合ってきた。

海自の「あぶくま」型護衛艦が候補にあがる。1989〜93年にかけて計6隻が就役し、海自の護衛艦の中でも旧式の部類に入る。弾道ミサイルに対処する能力は持たないものの、対潜水艦、対艦船ミサイルや魚雷などを備え汎用性が高い。フィリピン以外の東南アジアからも同型艦への関心があるという。

殺傷性を持つ装備は「防衛装備移転三原則」のもとで原則禁じている。輸出先の国と共同開発・生産をする形をとる場合は完成装備品でも輸出を認めている。日本政府は中古の場合でも共同開発・生産が規則上認められるか模索している。中古護衛艦を輸出する場合は安全性の観点から運用機関を延長するための整備などが必要となる見込みだ。改修の一部については共同開発の形をとる可能性がある。
フィリピンは戦闘力がある艦艇を必要としている。原子力潜水艦や空母を運用する中国と比べて海軍力が劣るとの危機感があるためだ。米調査会社グローバル・ファイア・パワーによるとフィリピンの保有艦艇のうち9割超が平時の警戒監視活動を軸とする哨戒艦だ。艦艇や潜水艦との戦闘を主に担うフリゲート艦は2隻しかない。

日比両国は共通の安保課題に対処している。ともに米国と同盟関係にある。中国軍が進出を加速する海域に接し、台湾有事となれば巻き込まれやすい状況にある。日本はフィリピンの防衛力強化への投資を進める方針だ。

フィリピン海軍の司令官は7月に海軍専門メディア「Naval News」のインタビューで「日本の交渉は初期段階だ」と明らかにした。「最速で2027年に鑑定を受け取る」と語った。具体的な隻数や時期は今後調整する。同海軍は実際に日本の護衛艦を視察した。装備品や整備状況などを確認したとみられる。すでに輸出実績のある防空用の警戒管制レーダーの追加輸出も俎上に上る。カバーできる南シナ海周辺の監視範囲を広げ、中国軍の動きを捉えやすくする狙いだ。
これまでに製造元の三菱電機は固定式3基と移動式1基を輸出する契約を結び、2基を引き渡した。防衛省幹部は「フィリピン軍はレーダーの探知範囲の広さなどで性能を高く評価している」と明かす。

将来的にはこれらのレーダーをつないで日本、米国、オーストラリア、フィリピンの4カ国でレーダー情報を共有する構想がある。各国のレーダーをあわせて中国軍の活動を把握すれば抑止・対処力が高まる。
三菱電機は5月に千葉市で開いた日本最大の防衛産業展示会「DSEI Japan」で「東南アジア向けシステム」として指揮統制システムを紹介した。4カ国でレーダー情報を共有するためのベースになる。

警戒管制レーダーや民間レーダー、米軍情報などを統合して、一元的に情報を部隊や指揮所へ共有できる。既存の装備品に限らず、将来的に導入する装備品とも柔軟につなげることが可能だという。

元自衛官としては、他国へ輸出は10年前ではタブーであったなどと想い隔世の感がある。自衛隊に対する信頼感、世界情勢の大きな変化などがミックスされた議論できる土壌ができてきたのだろう。中古護衛艦の輸出としてハードルは高いものの、是非進めてほしい。武器、装備品を大事にするという文化が根付いている自衛隊であれば、きっと旧型の護衛艦でもしっかり整備し、快適に使用できる状態となっていると思料する。まさに日本人の美徳と通ずるものがあります。影ながら応援していきたいと思います。

(参考 日経新聞 令和7年9月11日より)