育児時短の新設給付金、手取り減を抑制

子どもが小さく、育児に時間がかかる時期は、世帯の収入が減りやすい。保育園の送迎時間を確保するためなどに短時間(時短)勤務制度を利用すると、基本的に給与が減る。2025年度からは、こうした場合に受け取れる「育児時短就業給付金」が始まった。時短勤務の利用は女性に偏りやすいが、新たな給付金を考慮すると、夫婦で負担した方が世帯収入の減少を抑えられるケースがある。

「育児のために1日1時間や2時間など、働く時間を短くしても、給付が受けれるなら心強いだろう」こう話すのは社会保険労務士の望月氏。ここ数年は物価高で生活費が膨らむ。子どもがいる世帯にとって、収入の減少が抑えられる給付金の役割は大きいとみる。25年4月に始まった「育児時短就業給付金」は、育児のために、契約で決まっている労働時間(所定労働時間)を短くした場合、給与が減るなど一定の要件を満たすと支給される。厚生労働省によると4月から7月の受給者数はのべ約4万6000人、支給額は約10億円だった。「受給者数は徐々に増えており、順調に広がっている」(厚労省)という。

育児のため所定労働時間を短縮する時短勤務制度は「育児・介護休業法」で定められる。事業主は3歳未満の子どもを養育する従業員が希望すれば、契約上の労働時間を原則、1日6時間にできる措置を設ける義務がある。法改正により10月からは事業主が選択した場合、対象は小学校就学前までの子どもを養育する従業員に拡大する。会社によっては子どもの年齢を引き上げるなど、法律の規定を上回る制度を設ける場合もある。

ただし今回の給付金の対象は、時短勤務制度とやや異なる。まず、所定の労働時間を1日6時間にする場合だけでなく、7時間や7時間半など、時短勤務前より少しでも短くすれば対象となる。子どもの年齢は「2歳未満」としている。最長で小学校就学前までとなる法律に比べ、期間は短い。厚労省は「時短就業の長期化が助長されるのを防ぐため」とその理由を説明する。

給付金の4〜7月の利用者の性別は未集計だが、厚労省は「給付金の利用者は女性が多いだろう」と分析する。22年度の厚労省の調査によると、小学4年生未満の子を育てる正社員の時短勤務制度の利用状況は女性で51.2%に上る一方、男性は7.6%にとどまるからだ。ただ夫婦が同程度の給与なら、同じ短縮時間でも、妻だけ時短で働くより、2人で分担する方が世帯収入の目減りを抑えられる。

給付金の額は時短勤務の利用時に支払われた給与の10%。時短開始前に比べ、給与の減少率が10%未満の場合、支給率を調整する。支給額には支給対象月の給与と給付額の合計で47万1393円(26年7月末まで)など上限がある。

1日8時間の通常勤務時の給与がそれぞれ30万円の共働き夫婦の例を考えよう。まず、妻が1日の勤務時間を2時間短い6時間にした場合。妻の給与は時間短縮分(25%)だけ減り、22.5万円となる。給付金は給与の10%なので、2万2500円。世帯収入は54万7500円と、2人が通常勤務だった時の約91%になる。
短縮する2時間を、夫婦で1時間づつ分担するとどうか。給与は夫婦ともに1時間の短縮分(12.5%)だけ減り26.25万円。2人の合計は、妻が2時間短縮する場合と同じ52万5000円だ。
一方、給付金は1人2万6250円。2人合計では妻だけが2時間短縮するより3万円増える。これは給付金を計算する基となる給与が22.5万円から26.25万円に増え、給付金を2人で受け取ったためだ。妻が産後休業からすぐに復帰し、夫婦で子供が2歳まで時短勤務で働いた場合、給与の変動がなければ60万円超の差になる。しかも給付金は非課税で、社会保険料の計算の対象外だ。

夫婦の給与に大差があったり残業代を考慮したりすると、2人で分担する方が世帯収入が少ない場合もある。4月前から時短の場合は、4月1日に時短開始とみなす。時短開始前の給与の算出に時短利用期間が含まれることから、支給対象になりにくい。ただ、中長期的にはお互いのキャリアを尊重する方が共働きを続けやすい。社会保険労務士の佐々木氏は「女性ばかりが時短勤務をすれば、将来の昇給や賃金の格差につながる。夫婦で共に育てるという視点で、制度利用を考えたい」と話す。

(参考 日経新聞 令和7年9月27日より)