遺族年金の制度改悪

現在、ネットなどで話題の遺族年金に関する制度改正であるが、故人の配偶者が男性か女性かで差が大きい点を是正する内容であり、施行は2028年4月と少し先だが、制度を正しく理解しておきたい。実際は、年金の支出を抑えるための制度改正となっていると思っている。

遺族年金は遺族基礎年金と遺族厚生年金とに分けられる。遺族基礎年金は、国民年金の加入者が死亡した場合、子供(18歳の年度末まで)がいる配偶者が受け取れる。年金額は年度ごとに定まられた定額で、子供の人数により加算額がある。
一方、厚生年金加入者が亡くなった場合に受け取れる遺族厚生年金は、現行制度では、故人の配偶者が女性か男性かで大きく違う。

子供がいる女性の場合、遺族基礎年金を子供が18歳になる年の年度末まで受け取れ、上乗せの遺族厚生年金については生涯受け取れる。子供の成長で遺族基礎年金が終了しても自身の老齢基礎年金が受け取れる65歳まで中高齢寡婦加算があるという手厚い制度である。子供がいない場合は、30歳未満で夫が亡くなった場合は5年間の有期給付だが、30歳以上で死別すれば終身給付され、40歳以上の場合は、65歳まで中高齢寡婦加算もある。

しかし男性の場合は55歳未満で妻と死別しても受給権はない。55歳以上60歳未満で死別した場合には受給権が発生するが、遺族厚生年金が受け取れるのは60歳になってからとなる。収入のある女性が増え続ける中、家計が男性の収入に頼っていた時代のままの制度設計となっている。

今回での改正では、いよいよそこにメスが入った。3年ほど先だが、内容を正しく理解しておきたい。
遺族厚生年金では、男女差がかなり解消され、55歳未満の男性にも受給権が発生するのが大きなポイントだ。
子供がいるケースでは、男女とも遺族基礎年金とともに遺族厚生年金が受け取れるようになる。ただし、遺族基礎年金の受給が終わった後は、男女ともに5年間の有期給付となる。女性には65歳まで中高齢寡婦加算があるが、25年かけて縮小・廃止されるスケジュールとなっている。
子供がいないケースは、男性は60歳未満で妻と死別した場合5年の有期給付が受けれるようになる。女性は有期給付の対象が現行の30歳未満から40歳未満へと上がり、改正法の施工から20年かけて60歳未満に引き上げられていく。
家計を担っていた配偶者が亡くなった後、十分な収入が得られなければ大変だとのことで、5年の有期給付終了後も最長65歳まで所得に応じた継続給付が受けられる。

年金額が増える改正もある。遺族厚生年金の有期給付には有期給付加算が新設される。これは亡くなった配偶者の老齢厚生年金の4分の1相当額を加算するというものである。現行の遺族厚生年金は亡くなった配偶者の老齢厚生年金の4分の3相当額だから加算されることで、老齢厚生年金と同額となる計算だ。
また死亡分割も新たに導入される。これは亡くなった配偶者の年金記録をもとに老齢厚生年金に上乗せするというもの。3号保険者期間は2分の1、夫婦ともに厚生年金加入期間がある場合は、夫婦の標準報酬月額の2分の1を分割して上乗せし、老齢年金を増額する仕組みだ。
遺族厚生年金の収入要件撤廃も対象者には朗報だ。年収850万円以上の人でも受給できるようにする。

今回の改正で、マイナスになる部分もあるが、併せてプラスになる部分もあるので、よく精度について理解しておく必要がある。亡くなってから色々発生して、色々調べることとなるが、予め知識として持っておくと、安心して対応でき、もらうことを忘れていたということにならないはずだ。

(参考 日経新聞 令和7年8月9日)