厚生労働省は生活保護受給者の過剰受診を防ぐため、マイナンバーカードの活用を進める。生活保護の実務を担う自治体の福祉事務所が受給者の受診状況を早期に把握できるようにする。必要以上に通院している場合は本人を指導する。医療機関にシステム改修の費用を補助する。2026年度予算の概算要求に2億3000万円を盛り込んだ。厚労省所管で医療費請求書の審査などを手掛ける社会保険診療報酬支払基金(東京・港)を通じ、病院に28万3000円、診療所は5万4000円を上限に補助する。24年補正予算でも同じ事業に75億円を計上していた。
生活保護制度には、医療券を提示すれば福祉事務所が委託する病院などで全額公費で受信できる「医療扶助」がある。23年度の生活保護事業費は約3兆6000億円で、このうち約1兆8000億円が医療扶助だ。自己負担が不要のため過剰受診が起きやすいとの見方があった。新システムでは、生活保護申請時に福祉事務所が把握した受給者のマイナカード情報や受給者番号などを支払基金に登録する。医療機関で受給者のマイナカードを読み取ると、支払基金を通して福祉事務所に受診情報が共有される。
福祉事務所はこれまで、医療機関が発行する診療報酬明細書(レセプト)を支払基金を通して受け取り、受診状況を把握していた。指導までに約2か月かかっていた。受診頻度を逐一把握できるようにすることで指導対象者の迅速な洗い出しにつなげる。
厚労省によると、23年に同じ医療機関を月15回以上受診した「過剰受診」の疑いがあり、福祉事務所が指導した受給者は1800人だった。このうち52%にあたる943人は実態把握から3カ月後に受診が月14回以下となる「改善」の効果があった。同省は指導までの期間の短縮によりさらなる効果を期待する。
マイナカードによる生活保護受給者の確認は24年3月に始まった。医療機関による対応率は25年3月末時点で47.3%にとどまる。福祉事務所の委託先以外の医療機関で導入が進んでいないとみられる。新システムなら指定外の医療機関を訪れた生活保護受給者に対し、指定機関での受診を勧めることもできる。
25年度の医療費は予算ベースで43兆4000億円と、年金や介護を含めた社会保障費全体の約3割を占める。診察よりも薬の入手を目的とした「お薬受診」などの過剰受診の防止が課題になっている。
(参考 日経新聞 令和7年9月25日より)
生活保護受給者の過剰受診 マイナンバーで捕捉
